インタビュー記事ページ
2026/03/01
コンシューマーの本質を捉える。
Lキャタルトン・ジャパン合同会社様インタビュー第一部
マネージングディレクター山口様・プリンシパル櫻木様
1989年に米国で創業し、36年以上にわたりコンシューマー領域に特化し続けてきたLキャタルトン社。日本市場において、ミッドキャップを中心に、創業家とともに次の成長ステージを描くパートナーとして存在感を高めています。
今回は、マネージングディレクターの山口氏、プリンシパル(ポートフォリオマネジメント・日本チーム採用統括)の櫻木氏に、同社の哲学や組織文化、そして求める人物像について伺いました。
Lキャタルトン・ジャパン合同会社 マネージングディレクター
山口 龍平(やまぐち りゅうへい)
Lキャタルトン入社以前はCLSAキャピタル・パートナーズの日本特化型の中堅企業バイアウトファンドであるサンライズキャピタルのディレクターとして、コンシューマー・ライフスタイル及びeコマース分野を中心としたバイアウト案件を10年以上担当。大学卒業後は、Citigroup(東京)のGlobal Markets, Merger & Acquisition Groupでキャリアをスタートしている。
学歴:The University of WarwickでMORSE(Mathematics, Operational Research, Statistics and Economics)の学士号を取得
Lキャタルトン・ジャパン合同会社 プリンシパル、ポートフォリオマネジメント
櫻木 健司(さくらぎ たけし)
Lキャタルトン入社以前は三井物産企業投資にてヴァイスプレジデントとして、ポートフォリオ企業のバリューアップを主としながらソーシング・エグゼキューションにも従事。それ以前は、A.T. カーニーにて経営コンサルティング業務に従事。大学卒業後は、シグマクシスの戦略コンサルティング部門でキャリアをスタートしている。
学歴:東京大学で学士号(薬学)を取得後、東京大学大学院薬学系研究科で修士号(薬科学)を取得。薬剤師。
私たちは“コンシューマースペシャリスト”
―― まず、Lキャタルトン社の概要と特徴について教えてください。
山口: Lキャタルトンは1989年に米国でスタートしたプライベートエクイティファンドです。最大の特徴は、創業以来一貫して「コンシューマー領域」に特化してきたことです。ここで言うコンシューマーとは単なる消費財に限りません。食品やアパレル、化粧品といったモノだけでなく、消費者向けサービスも含め、「個人が選び、使い、体験するビジネス」全体を対象としています。
私たちは常に、「なぜ消費者はそのブランドを選ぶのか」、「どういう価値観で購買しているのか」を深く理解することを検討の出発点にしています。その理解を基に成長余地の大きい企業とともにその成長余地実現に向けて取り組んでゆく。それが私たちの第一の基本姿勢です。そして世界中のコンシューマー関連知見とネットワークを蓄積しているグローバルファームでありつつ中堅・中小企業(ミッドキャップ)にフォーカスすることによって、企業にとって次のステージに向かうための心強いパートナーでありたいと考えています。
更に、LキャタルトンはLVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンと独占的な戦略的提携関係にあり、その卓越した経営ノウハウやグローバルな業界ネットワークから示唆を得られる関係にあります。
コンシューマー特化であること、グローバルなファームでミッドキャップに特化していること、LVMHと戦略的パートナーシップがあること、この3点が私たちの個性だと考えています。
―― 他のファンドと比べたときの違いはどこにありますか。
山口: 一言で言えば「消費者理解の解像度」ではないでしょうか。プライベートエクイティの世界では、店舗展開の加速や海外進出、ブランディング強化、DX推進といったテーマで企業の成長を目指そうとアピールすることは一般的かと思います。しかしそれらはあくまで手段であって、私たちはソリューション提供者ではありたくないと考えています。
私たちは、「なぜ消費者がそのブランドを選び続けているのか・本質的な支持を得ているのはどの部分なのか」を徹底的に掘り下げています。たとえば、売上が伸びている企業がある時、その成長が一時的な価格優位によるものなのか、一過性のブームに乗っていることによるのか、ブランドへの共感や世界観への支持が着実に広がっている事によるものなのか、によって今後採用すべき成長戦略は異なります。
Lキャタルトンは36年以上コンシューマーに特化してきました。グローバルで蓄積された知見やネットワークを参考にしながら、財務的な検討の前に“消費者理解に基づく見立て”を置く。この順番の違いこそが他との本質的な差だと考えています。
櫻木: なるべく分散したほうが安定するという中にあって、組織としてコンシューマー領域に張り続けている点が他との最大の違いです。
社内では様々なブランドやカテゴリーについて、「なぜこの商品は今支持されているのか」、「この体験設計のどこが優れているのか」といった議論を日常的に行っています。検討対象だけでなくその比較対象も含めて、机上でできる調査は当然やったうえで、商品をいくつも買っては使ってみて、店舗があれば足を運んで店員の方々とも接し、会員になってメッセージやオファーの内容やタイミングを確認する。参入障壁や模倣しにくい強みは構築されているのか、継続的なものかを考察する。購買体験、違い、良し悪しを言語化して認識する。そうした積み重ねで検討・判断の質を高めるようにしています。
ここで領域特化していることが効いてきます。こういった活動には時間がかかるのです。同じ時間を各産業を見るのに広く配分するのとコンシューマー領域に集中させ続けるのとで「解像度」が違ってくるのはこのためです。更に、世界の各地域で同じことをやっている同僚がいて300件以上の経験値があります。類推によるアプローチも可能になって、過去の成功や苦労の蓄積が蓋然性が高い成長ストーリーの構築へとつながっていきます。
―― 活動方針についても教えてください。
山口: 強い商品やサービスをすでに持ちながら、まだ成長余地を大きく残しているミッドキャップの企業を中心に検討しています。
特に多いのが、創業家による事業承継シーンです。ブランド力や商品力は確かである一方、組織体制や海外展開、データ活用などの面で次のステージに進みきれていない企業は少なくありません。私たちは、創業家にも株式を継続保有いただきながら、経営基盤を整え、成長戦略を再設計し、次のフェーズへ伴走するスタイルを取っています。
日本市場は成熟していますが、コンシューマーブランドの海外展開という観点ではまだ大きなポテンシャルがあると考えています。他方、「外資系ファンド」という言葉に対する心理的ハードルがあるオーナーが少なからずいらっしゃるという現実がありますので、私たちはコンシューマーに特化した専門性を持つパートナーとして信頼を積み重ねることを重視しています。
そのブランドがどの市場で、どの消費者に、どう受け入れられるのか。戦略設計と経営支援を通じて並走していくことが私たちの活動方針です。
信頼で結ばれたチームと企業文化
―― お二人の入社経緯について教えてください。
山口: 私はもともと海外で学んだ経験があり、日本企業が持つ技術力やブランド力はより広い市場で活かせるはずだという思いが強くありました。
また、仕事をする中で、「その企業がどこまで世界に通用するかを一緒に考え、実現する」ことにも魅力を感じるようにもなりました。そうした観点で見たときに、コンシューマー領域でグローバルネットワークを持ち、かつミッドキャップの企業と真正面から向き合えるLキャタルトンの環境は、自分の志向と非常に合致していたのです。
加えて、日本の代表である清水とは10年来の付き合いがあり、長い時間を通じて彼の思考や判断を見てきました。ビジネス上の信頼だけでなく、土台には人としての信頼があり、その延長線上でチームをつくっていけるという安心感はとても大きかったですね。そこが最終的な決め手になりました。
櫻木: 私は前職での経験がきっかけです。Lキャタルトンと一緒に仕事をする機会があった中で、ブランディングや消費者視点といった専門性を発揮しているLキャタルトンに感銘を受けました。ずっと仕事を選り好みせず生きてきて、「私は何者として見られたいか」というキャリアの色に悩んだ時期でもありましたので尚更でした。
更に、清水の仕事のスタイルも印象的でした。議論を徹底的に尽くし、判断や方針は明快です。ブレませんし、判断や方針を出すまでの過程には論理性と透明性が常にあり、納得感がありました。この人のもとでもっと一緒に働きたいと感じました。
コンシューマー領域特化し専門性を突き詰めることのできる組織で働けること。そして、信頼できるリーダーのもとで働けること。その両方が揃っていると感じて入社を決めました。
―― 組織として大事にしている文化について教えてください。
櫻木: Lキャタルトンでは大切にしている9つの価値観、cultural valuesがあります。
Low Ego-小さいエゴ、Character-個性、Continuous Improvement-継続的改善、Curiosity-好奇心、Courage-勇気、Collaboration-協力、Creativity-創造性、Candor-率直、Commitment to Excellence-卓越性の追求。その中でトップレフトにくるのがLow Egoです。
チームメンバーは投資銀行出身や戦略コンサルティングファーム出身など、それぞれが専門性の高いバックグラウンドと能力を持っていますが、個人では成しえない大きな成果創出を目指すうえで重要なのはチームとしての能力です。また、小さなチームで長い時間を共に過ごすことになります。それにそもそも私たちはあくまでも黒子ですからスタンドプレーは不要です。こういったことで、それぞれが高い品質基準を追求し続けながら、心理的安全性が高く倫理観も備わった集団でありたいと考えています。
Lキャタルトンのグローバルウェブサイトには、”Brand curators, consumer visionaries, operational polymaths, and most importantly, good people”とも表現されています。私たちは、このような価値観に共感し賛同できるメンバーで組織を構成したいと考えています。
―― チーム拡大の背景についても教えてください。
山口: Lキャタルトンでは2024年に日本企業に特化したファンドを立ち上げました。それまではアジアファンドから良い機会があれば日本企業に投資をおこなってきましたが、日本市場と私たちのコンシューマー特化という強みの相性が良いと判断したからです。
日本には、強いブランドや商品力を持ちながら、経営人材やノウハウ不足で次のステージに進みきれていない企業が数多くあります。そこに専門性を持って入り、伴走できる余地は非常に大きいのです。この確信が日本ファンド設立の背景にあります。
これに伴ってチームサイズは倍増しましたが必要次第で更に採用を進めます。ただ、急拡大は企業文化を痛めるリスクもありますから単純に人数を増やせばいいとは考えておらず、採用ではスキルだけではなく、価値観やコンシューマー領域への強い思いを重視しています。その結果が体制の安定につながると考えています。
櫻木: 想定する成長に必要なリソースを必要な量、投下していこうと考えています。実際、ディールメンバーがPMIフェーズにおいて一定期間集中的に、企業の経営陣や次世代リーダー陣と信頼関係を深めながら各種テーマに取り組むケースもあります。
企業業績をモニタリングする、何かの予兆をつかむにとどまらず、積極的に企業の成長曲線を押し上げるよう後押しして、前向きの影響をもたらすことが重要です。企業の数が増えると、このような関与の仕方を続けるために人数も必要になります。私たちの組織拡大は関与の質を落とさないための拡大だと理解していただければと思います。
入社希望者に求めるもの
―― どのような人物を求めていますか。
櫻木: ファンドに資金をお預かりすることの責任は重大です。先に述べた価値観に完全に共感し賛同いただける方を求めたいと考えています。
山口: 小さいチームである分、一人ひとりの裁量は大きいです。「このテーマを深掘りしたい」、「この経営者に会いたい」と手を挙げれば、基本的にポジティブに受け止められます。自らネットワークを広げに行き機会を創りに行くような野心を持った方にとっては、非常に面白い環境ではないでしょうか。
なお、当然ですが消費者の半分は女性です。そのため、ブランドやサービスを考える上では多様な視点が不可欠です。実際、グローバルのオフィスでは女性比率も高く、海外拠点のパートナーと連携しながらキャリアを築くこともできます。日本ではまだプライベートエクイティ業界における女性比率は高くありませんが、Lキャタルトンには女性のキャリア構築機会もあると思います。
性別に関係なく、専門性と視点を持ち込みチームの中で価値を発揮できる人にとっては十分に活躍できる環境です。
―― 最後に、候補者へのメッセージをお願いします。
山口: プライベートエクイティにもさまざまな選択肢があります。大型案件を数多く扱うファンドもあれば、特定の産業に強みを持つファンドもある中で、私たちはコンシューマーに特化し、実際に商品やサービスに触れながら企業と向き合うスタイルを貫いてきました。
店舗に足を運び、商品を使い、サービスを体験する。そのうえで、消費者の視点から戦略を組み立てるのです。財務に加えてブランドの世界観や顧客体験まで含めて企業の成長を支える、そうした手触り感のある活動に魅力を感じる方には、非常にやりがいのある環境だと思います。
櫻木: ビジネスに強い関心を持ち、語ることを楽しめる人には合う会社だと思います。なぜこの商品/サービスが支持されているのか、なぜこの体験設計が優れているのか、といった問いを、半ば趣味のように追い続けられる人にとって面白い経験が積めるはずです。
好きであることは強い武器になります。深く入り込めば入り込むほど見える景色は変わります。その先には、日本発のブランドを世界へ届けるという挑戦があります。そんな挑戦を、ともに本気で楽しめる方との出会いを心から楽しみにしています。
※本インタビュー記事は二部構成です。次回は投資プロフェッショナル座談会になります。
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