インタビュー記事ページ
2025/02/05
「日本の宝を育てる」という使命と共に。
独自の投資哲学で企業の成長を支援する
クレアシオンキャピタル様インタビュー第一部:常務取締役 最高投資責任者 辻様
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クレアシオン・キャピタル株式会社
常務取締役 最高投資責任者 辻智史(つじ さとし)
野村総合研究所、ローランド・ベルガーにおいて、事業戦略立案や業務改革等のコンサルティングに従事。
その後、J-STARの創立メンバーとしてプライベートエクイティ投資、事業会社でのマネジメント経験を経て、当社参画。
京都大学大学院工学研究科修了
ウェルスマネジメントとPE投資を融合させた独自のビジネスモデルで、成長企業への投資を手がけるクレアシオン・キャピタル株式会社。
2011年の設立以来、独自の投資手法と企業価値向上支援で多くの投資先企業の成長をサポートしてきた。
同社が大切にする価値観や求める人物像について、代表の辻󠄀氏に話を伺った。
独自の投資モデルで切り拓く新たな可能性
―― クレアシオン・キャピタルに参画された経緯をお聞かせください。
辻󠄀様(以下、敬称略): 約15年前、前職のJ-STARでファンドマネージャーとして働いていた時に、当社グループの創業メンバーがFAという立場で仕事をご一緒させていただいたのがきっかけでした。当時、当社グループは富裕層向けの財務コンサルティングやM&Aのアドバイザリー等を手がけていましたが、その後PE事業に進出するにあたり、私に事業立ち上げの依頼があり、2015年に参画する運びとなりました。
当時クレアシオンが構想していた「ウェルスマネジメント×PE投資」という新しいビジネスモデルに、これまでにはない可能性を感じました。10年前の日本にはこのようなファンドはなく、多くのファンドはサイズ感だけが異なる同質的なビジネスモデルを展開していました。この会社なら他とは違う形で価値提供できると考えたのが、この道を選択した理由です。
―― 御社ならではの特徴についてお聞かせください。
辻󠄀 : 大きく2つの特徴があります。1つは富裕層投資家ネットワークを有していること。もう1つはIPO志向が非常に強いことです。
富裕層投資家ネットワークは、当社の創業メンバーが20年以上にわたり構築してきた強みです。
弊社では、機関投資家様のポートフォリオ投資として組成しているブラインドファンドに加え、投資先専用のターゲットファンドを組成し、個人投資家の方々に個別案件毎に投資いただいています。
この「個別案件」の方式では、イグジットが各案件に紐づくため、通常のファンドと比べてパフォーマンスの確定が早いのが特徴です。
例えば、入社2年程度の若手メンバーにもキャリー(成功報酬)が発生するケースがあります。
富裕層ネットワークを持つ企業がファンドビジネスを始めたのは、おそらく当社が初めてですし、ファーム内にウェルスマネジメント担当者がいるファンドも当社だけかと思います。
―― ターゲットファンドとブラインドファンドを併用される中で、投資判断のプロセスに違いはありますか?
辻󠄀 : 投資判断の本質的な部分に違いはありませんが、アプローチの仕方にはそれぞれ特徴があります。
ターゲットファンドの場合、投資家の方々も事業オーナーとしての経験のある方が多く、より事業の本質的な価値や成長性を重視する傾向があります。
例えば、新しい市場を開拓している企業や、独自の技術やビジネスモデルを持つ企業に対しては、自身の経験則からその可能性を評価するといったことがあるわけです。
また、投資後の価値向上支援においても、自社のリソースを活用した協業や事業支援の可能性が期待されることもあります。
一方、機関投資家向けのブラインドファンドでは、より定量的な基準や市場の成長性、業界動向などの客観的な評価軸が重要になります。
ただし、当社ではどちらの場合でも軸とする評価基準があり、投資先企業が「日本の宝となりうるか」というものです。
これは単なる財務的な成功だけでなく、その企業が持つ技術や事業モデル、企業文化が日本の産業界に真の価値をもたらすかどうかを見極める重要な判断基準なのです。
実際の投資プロセスでは、両者の視点を組み合わせることで、より多角的な検討が可能になっています。
事業オーナーとしての経営感覚に基づく評価と、機関投資家的な客観的評価の両面から投資判断できることは、当社の大きな強みです。
人間性とプロフェッショナリズムの融合
―― 組織の特徴や求める人物像についてお聞かせください。
辻󠄀 : 最近では他のファンドでもIPO志向を掲げるところが増えてきていますが、当社の特徴は組織構成にあります。半分が戦略コンサルタント出身、残り半分が会計士や弁護士などの専門家で、金融色が薄く、かつクライアント企業に尽くし、支援する経験を積んできたメンバー構成です。
そのため、メンバーの多くがクライアント企業の成功と成長に対して強い思い入れを持っており、財務的なバリューアップだけでなく、本質的な企業価値の向上を大切にしています。
このように、当社の特徴は「いわゆるファンドっぽくない」メンバーが多いことです。
マネジメントインタビューなどで、投資先企業のオーナーから「なんだか他のファンドとは印象が違うね」といったコメントをいただくことも多いです。
―― コンサルタント出身者と会計士・弁護士出身者が混在する中で、案件執行においてどのようなシナジーが生まれていますか?
辻󠄀 : それぞれの専門性を活かしながら、投資のフェーズごとに効果的な役割分担ができています。
例えば投資検討の初期段階では、コンサルタント出身者が事業の本質的な競争力や成長戦略を分析し、専門家メンバーがストラクチャーやリスク面での実現可能性を検証します。
投資後の価値向上フェーズにおいては、コンサルタント出身者は事業戦略の立案や組織強化など、企業の成長面を主導する一方、会計士や弁護士は管理体制の構築やコーポレートガバナンスの整備など、企業としての基盤づくりに力を発揮します。
この両輪がうまく機能することで、日本の中小企業の「家業から企業への転換」をより確実にサポートできるのです。
また、それぞれバックグラウンドが違うので、案件の議論も活発になります。
同じ事象でも戦略面からの視点と、法務・会計面からの視点では意見が異なることも多く、こうした建設的な議論の展開は、より良い判断につながっていると感じます。
―― 「家業から企業への転換」において、具体的にどのような施策を重視されていますか?
辻󠄀 : 大きく3つの領域での支援を行っています。1つ目は「経営の仕組み化」です。
多くの優良な中小企業では、経営者の勘と経験で重要な判断が行われています。これを次世代に引き継いでいくため、意思決定プロセスの可視化や、データに基づく経営管理体制の構築を支援しています。
2つ目は「人材育成と組織づくり」です。成長のボトルネックとなりやすいのが、次世代の経営人材の不足です。
外部からの人材招聘支援はもちろん、社内人材の育成プログラムの構築や、権限委譲を促進する組織改革なども手がけています。
3つ目が「事業基盤の強化」です。これは財務面での改善だけでなく、取引先との関係強化や、新規事業開発の支援なども含みます。
特に重視しているのが、その企業ならではの強みを活かした成長戦略の策定です。画一的な改善策ではなく、その企業の文化や価値観を尊重しながら、持続可能な成長モデルを構築していきます。
企業としての基盤を強化しながらも、その企業の独自性や企業文化は維持すべきです。そうしたバランスは難しいこともありますが、我々が投資先企業に提供できる重要な価値だと考えています。
価値創造の源泉となる組織文化
―― 投資判断の背景にある組織の哲学や、それを支える文化についてお聞かせください。
辻󠄀 : 当社の投資判断基準である「この企業は日本の宝と呼べるか」という問いは、当社の組織哲学を端的に表現しています。
これは単なるスローガンではなく、投資判断の根幹を成す評価軸なのです。
私たちが重視していることは財務的なリターンだけでなく、その企業が持つ可能性や社会的な価値を丁寧に見極めることです。
たとえ短期的に収益性が見込める案件であっても、この理念に合致しないと判断される場合には、投資を見送る決断を下すこともあるのです。
こうした判断は、一人ひとりが「企業価値の本質とは何か」を常に問い続けているからこそ生まれるものです。投資委員会での議論も単なる数値の検証に終始するのではなく、その企業の持つ独自性や社会に対して生み出しうる価値について、多角的な視点から検討しています。
―― 投資委員会では具体的にどのような議論が交わされますか?
辻󠄀 : 投資委員会では、定量的な分析に加えて、3つの重要な観点で議論しています。
1つ目は「企業としての持続可能性」です。現在の収益力だけでなく、その事業モデルが将来にわたって持続可能かどうかを徹底的に議論します。
2つ目は「経営者との価値観の共有」です。我々は単なる資本提供者ではなく、共に企業を育てるパートナーです。
そのため、経営者の方々と価値観を共有できるかどうかはとても重要です。経営者インタビューの内容や、デューデリジェンス過程での対話の質なども、重要な判断材料となります。
3つ目が「社会的意義」です。
その企業が持続的に成長することで、従業員や取引先、地域社会にどのような価値を提供できるのか。これは「日本の宝」たりうるかどうかの本質的な議論につながります。
こうした議論の中で、メンバーのバックグラウンドの違いが活きてくる点は面白いところです。
例えば、事業の持続可能性については、コンサルタント出身者は市場環境や競争力の観点から、会計士や弁護士などの専門家は財務基盤やガバナンスの観点から物事を考えます。
毎回活発な議論になりますが、そうした多角的な検討がより良い投資判断につながっているのではないでしょうか。
日本の未来を見据えて
―― 今後の展望についてお聞かせください。
辻󠄀 : 日本には、成長ポテンシャルを持ちながらも、それを存分に発揮できていない中小企業がまだまだ多く存在します。
実際、斬新なビジネスモデルで素晴らしい利益を出している企業や、独自の強みを持つ企業にたくさん出会います。
ただ、そうした企業の多くが事業承継の問題や、人材不足、資金不足といった課題を抱えています。
我々が目指しているのは、そうした企業の潜在能力を最大限に引き出し、「日本の宝」となるような企業に育てていくことなのです。
また、今後は主軸のバイアウト投資に加えて、日本のオンリーワン資産運用会社として、バイアウト以外の商品も展開していくつもりです。
投資先企業の成長支援と富裕層の方々への資産運用機会の提供を通じて、日本経済の発展に貢献していきたいですね。
―― 今後の展望についてお聞かせください。
辻󠄀 : 世の中にはさまざまな職種がありますが、私はバイアウト投資ほど面白い仕事はないと思っています。常に様々な事態が起こり、そこに人生の縮図が垣間見える仕事です。経営者との対話、投資判断、そして企業価値向上に向けた支援まで、すべての過程に深い学びと発見があります。
ファンドの世界は、一見するとドライなイメージがあるかもしれません。しかし当社では、人間性を重視しお互いを支え合いながら、投資先企業の成長をサポートすることに喜びを感じられる方々が集まっています。確かに最低限求められる能力はありますが、特定の資格や専門知識がなければできないというわけではありません。むしろ、この仕事に本当に関心があり、情熱を持っている方であれば、苦労も喜びも分かち合いながら、共に成長していけると確信しています。
当社では、現在アドミンを含めて10名以上、割合にすると1/4以上のメンバーが女性です。プロフェッショナルとしても着実にキャリアを積んでおり、今後さらに増えていく素地があると考えています。また、仕事と家庭をうまく両立されている社員も多く、子どもの送り迎えのための時差出勤や早退など、柔軟な働き方も可能です。このように、人生のさまざまなステージにあっても、個々人の状況に応じて最大限の力を発揮できる環境づくりを心がけています。「我こそは」という意欲溢れる方と、一緒にこの業界を盛り上げていけたら嬉しいです。
※本インタビュー記事は二部構成です。次回は若手座談会になります。
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