インタビュー記事ページ
2026/08/27
玉石混交のPEマーケット、そしてAI時代。PEとしての真価が問われる今、
リターンの源泉をどこに求めるのか――DXを武器に既存の枠組みを超える『第三のファンド』、D Capital
投資後の業績を確認し、経営陣に改善を求める――。従来のPEファンドは、そうしたモニタリング中心の関与でも、リターンを生み出せました。しかし競争が激化し経営課題が複雑化する中、進捗管理だけで企業価値を高めることは難しくなっています。
D Capitalが、その先の武器として掲げるのが「DX」です。投資チームに加え、データサイエンティストやエンジニアを擁するDXチーム、経営支援チームをGP内部に置き、ソーシングからExitまで一気通貫で企業変革に取り組む。既存の「日系・ミッドキャップ・独立系」という分類には収まらない、いわば「第三のファンド」を目指す独立系PEファンドです。
本インタビューでは、投資・DX・経営支援それぞれの立場から5名のメンバーに、DXをリターンの源泉に変える仕組み、AIによって変わるPE業務、そして「この案件を自分で作った」と言える若手の成長環境について伺いました。
INDEX
お話を伺った方
橋井 崚佑 様/ディレクター
双日にて、主にインフラ業界におけるM&A、新規事業投資およびプロジェクトファイナンスの組成を経験。その後、クレディ・スイス証券にて国内外の様々な産業におけるM&A、資金調達を担当。京都大学総合人間学部総合人間学科卒業。
太田 悠介 様/ヴァイスプレジデント
三菱商事にて石油化学事業に従事。コモディティトレーディング、事業投資先関連事業等を担当。一橋大学法学部法律学科卒業、ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)修了 - The Dean’s List 及び Distinction(成績トップ10%)受賞。
竹内 天秀 様/ヴァイスプレジデント
シティグループ証券にて、コンシューマーリテール、ヘルスケア、製造業等の産業におけるM&Aや資金調達を経験。直近では、同社M&Aグループで国内外の様々な案件を担当。早稲田大学商学部卒業。
會田 健人 様/ヴァイスプレジデント
スマートキャピタルにて、PEファンド向けBDD/PMIや、教育/小売/アパレル等の大手~中堅企業へ向けた中期経営計画策定及び新規事業立案に従事。また、金融/小売/食品等の産業におけるM&Aアドバイザリーも担当。慶應義塾大学経済学部卒業。
杉崎 琢人 様/プリンシパルデータサイエンティスト
三菱商事にて、会計系システム、BIツール、NLP技術など、多数のシステム導入や技術検証プロジェクトに従事。その後、DXスタートアップのJDSCに参画し、PEファンド投資先を中心に、多様なクライアントのDX推進を支援。機械学習を活用した新規事業開発やアルゴリズムの知財化を通じて、同社の上場を牽引し、最終的に執行役員としてデータサイエンス組織を統括。東京大学大学院 学際情報学府 総合分析情報学コース修了。
インタビュアー
高木 ゆり恵(XG Partners)
1. 既存の分類では語れない――D Capitalが目指す「第三のファンド」
―― まず、PEファンド業界における御社の立ち位置について、ご紹介いただけますでしょうか。
太田 様(以下、敬称略): PEファンド業界の棲み分けは、大きく3つの切り口で語られることが多いです。1つ目は運営母体が「外資系か日系か」、2つ目はファンドサイズが「ラージキャップかミッドキャップかスモールキャップか」、3つ目は投資家特性が「何かの系列か独立系か」です。この違いは、ファンドのカルチャーや投資先のサイズ、バリューアップの手法に大きく表れます。
D Capitalは、既存の枠組みで言えば「日系・ミッドキャップ・独立系」に位置づけられますが、我々はそうした区分に収まらない「第三のファンドのあり方」を提示したいと考えています。
―― その「第三のファンド」とは、具体的にどのようなものでしょうか。
太田: 我々は「DX × PE」というコンセプトを掲げています。日本の中堅・中小企業の生産性向上が社会課題となる中、その解決にはDXが不可欠です。しかし、一言でDXといえどその実行は容易ではなく、真に意味のあるDXの完遂には、単なる業務のデジタル化だけでなく企業文化、組織の変革も含むトップマネジメントの強いコミットメントが求められます。そこで、マジョリティ投資を通じて経営をコントロールするPEファンドと、トップダウンのコミットが必要なDXは非常に親和性が高いという仮説に至り、「DX×PE」のコンセプトが形作られました。
また、D Capitalのパートナーやシニアメンバーは、2010年代以降のPE投資の前線で戦ってきた世代です。2000年代の日本におけるプライベートエクイティ黎明期から業界も進化し、2010年代に入ると競争が激しくなる中で、「モニタリング(進捗管理)だけをしているPEでは、もはやリターンが出ない」という強い課題認識を持っています。よってGPとして、投資先を支援するための具体的かつ差別化された武器を持たなければならず、その武器が我々にとっては「DX」となります。モニタリングだけでうまく経営が回り、十分なリターンが出せるのであればそれに越したことはありませんが、ファンドとして差別化していくためには、よりハンズオンで関わっていく必要があると考えています。
また、そのハンズオンの一つの手段として現在はDXが求められておりますが、時代によって求められるハンズオンのメニューやファンドの関与の在り方は変わってくると考えており、「○○×PE」の○○の部分は変わっていくと考えております。よって、我々自身も常に既存の枠組みに捉われず変化をし続ける必要があり、そうした事が出来る新たなファンドを目指していきたいと考えております。
―― 設立からの歩みと、現在の組織構成について教えてください。
太田: D Capitalは2021年に設立され、現在5年目を迎えています。これまでに2つのファンドを組成し、運用総額は約1,000億円規模に達しています。投資先はロールアップ(同業他社の買収・統合)を含めると十数社にのぼり、食品・ヘルスケア・物流・教育・スポーツ用品・データマーケティング・外食など、幅広い産業の有力企業に投資させていただいております。
組織の最大の特徴は、GPの内部にデータサイエンティストやエンジニアを抱える「DXチーム」が存在することです。彼らは投資後の支援だけでなく、ソーシング(案件発掘)から投資検討、バリューアップまで一気通貫で関わります。
―― メンバーの皆さんは、どのようなカルチャーに惹かれて入社されているのでしょうか。
太田: コンセプトに共感し「新しいチャレンジがしたい」というメンバーが多く集まっています。エスタブリッシュな環境よりも、新しい組織で自ら貢献し、自由に起案してサポートし合える風土を求める人が多いです。
橋井: 老舗大手ファンドは階層化が進んでいることが多いですが、D Capitalは非常にフラットです。パートナーとの距離も近く、若手であっても投資委員会や日々のディスカッションの中で意見を言いやすい環境です。手取り足取り教えてもらうのを待つタイプより、自分でどんどんやっていきたいタイプが向いていると思います。
エスタブリッシュなファンドに行きたい方と、新しい組織で自分自身も組織づくりに貢献していきたい方がいると思いますが、D Capitalを選んでくださる方には後者が多い印象です。自分がやりたいことをきちんと提案すれば、ファームとしてサポートしてもらえる環境に魅力を感じてくださる方が多いのだと思います。
―― データサイエンティストやエンジニアにとって、なぜPEというキャリアが魅力的なのでしょうか。
杉崎: 私は前職で、PE投資先のバリューアップ外部アドバイザーとして支援していたのですが、PEとDXの相性の良さを実感していたのはその時からです。ただ、外部アドバイザーの立場だと「マーケティングを改善して売上を伸ばしてほしい」といった、PL(損益計算書)の一科目だけを切り取られた依頼になりがちです。GPの中に入れば、企業全体のBS(貸借対照表)やPLを見ながら「そもそもどの課題を解くべきか」から取り組むことができ、与えられるインパクトが格段に大きくなります。一般的なGPにデータサイエンティストが一人で入っても、専門性を評価してくれる人がおらずワークしにくいものですが、D Capitalには技術を深く理解しているパートナーがいるため、非常に働きやすい環境です。異なる強みを持つ技術者にとって、専門性を理解してくれる人が経営レベルにいることは大きな違いだと思います。投資チームのメンバーも技術に興味のある方が多いので、チームを越えたコラボレーションもスムーズです。
2. モニタリングだけでは、もうリターンは出ない――「Unlock Japan」を実現する投資の武器
―― D Capitalは「Unlock Japan」というミッションを掲げていらっしゃいます。PEファンドが投資リターンだけでなく、こうしたミッションを掲げる背景について教えてください。
橋井: 「Unlock Japan」とは、潜在的なポテンシャルがあるのに、何かしらの制約(資本不足、デジタル化の遅れ、後継者不在など)によってそれを発揮できていない企業を「解放」しようという考え方です。
大前提として、我々はPEファンドですので、投資リターンはきちんと追求します。その上で、このミッションがあることで、結果的に投資判断の質も向上すると考えております。目先の財務数値には表れていないポテンシャルを見出し、我々が資本を入れ、人を採用し、デジタル化を推進し、企業のポテンシャルを解き放つことで、それが結果的にリターンにつながると考えから「Unlock Japan」を掲げております。
―― 具体的な事例として、食品業界での投資についてお聞かせいただけますか。
太田: 我々はおやつカンパニーへの投資を皮切りに、日本の菓子業界の課題やネットワークを深く理解することができました。それが同業他社への投資につながり、さらに当業界におけるバリューアップの武器も広がり、また次の投資に繋がるという良い循環が菓子セクターにおいて生まれています。同じ業界で同規模の会社は、共通の課題を抱えていることが多く、それら課題へのソリューションも横展開しやすいです。こうした業界を深掘りするアプローチは、他の業界にも応用できる我々の強みです。
―― もう一つの大きな事例として、データマーケティング領域での事例について教えてください。
橋井: ある大手データマーケティング企業の日本法人へのご支援は、まさに「Unlock Japan」を体現した事例です。この企業は全国の小売店から購買データを預かり、日本最大級のリテールネットワークを構築しているという素晴らしいビジネスモデルでしたが、海外の親会社の業績不振により、成長投資や人材の採用が抑制されてしまうという問題がありました。
日本法人として独立して、人材採用含めた成長への投資を加速させることで、会社の秘めたポテンシャルを解き放つことができるのではないかという仮説のもと、売主様と協議をして、日本法人への投資が決まりました。本件における会社のポテンシャルを引き出すための最大のハードルは「ITのカーブアウト(切り出し)」でした。事業の根幹となるシステムがすべて親会社の海外にあったため、日本法人として独立運営をするためには、ITシステムを日本へ移管・再構築する必要がありました。多くのPEファンドは外部ベンダーに依頼をせざるをえない分野だと思いますが、我々は社内のエンジニアと「DX Guild」と呼ぶ外部の専門人材ネットワークを活用し、DD(デューデリジェンス)の段階から詳細な移行計画を策定しました。
その後、投資から約1年間、必要なリソース・資本を投下して、計画通りにシステム移行を完了させました。独立運営が可能になった後、多くの事業会社様からご関心を寄せていただくようになり、次の成長を実現するために、より大きなシナジーが見込めるベストオーナー様にバトンタッチ致しました。制約がありポテンシャルを発揮できていなかった会社に、きちんと必要なリソース・資本を投下し、企業の価値を向上させるという「Unlock Japan」を体現した事例であったと考えております。
―― オーナー経営者の方々にD Capitalが選ばれる理由はどこにあるとお考えですか。
太田: 一つは事業理解の深さだと考えています。オーナー様は、自分が育てた会社や業界を深く理解している人に託したいという共通した思いがあります。その上で我々のDXというアプローチで示す飛躍的成長の可能性に、強く共感していただけるのだと思います。
橋井: パートナー陣を含めてメンバーが若く、「この人たちなら現場に入り込んで、本当に汗をかいてやってくれそうだ」という期待感を持っていただけることも大きいですね。
杉崎: DXチームのメンバーもオーナー面談に同席することが多いのですが、「この領域でこういう改善ができそうです」といった具体的なディスカッションができることで、一気に信頼していただけるのだと思います。他のファンドと比較しても、マクロの話から具体的な施策の話まで解像度高く話ができることが私たちの強みです。
3. AIが作業を代替する時代、PEプロフェッショナルには何が残るのか
―― PE業務そのものへのAI活用について教えてください。
橋井: PEの業務は大きく「ソーシング」「エグゼキューション」「バリューアップ」「エグジット」の4フェーズに分かれますが、多くの場面で大量の情報を集め、ドキュメントを読み込んで、情報を整理する作業が発生します。我々は特にこの情報整理業務において、AIを組み込み、劇的な効率化を実現しています。
D CapitalのAI活用における強みは、投資チーム・DXチーム・アドミチームから構成される「AI推進チーム」があることです。投資チームが「GP業務のここを効率化したい」とアイデアを出し、DXチームがそれを実装します。AI活用においてボトルネックになりがちなセキュリティ面についても、社内のエンジニアが「この環境ならこういう使い方をしても問題ない」という明確なガイドラインを整備しています。外部のコンサルに頼るのではなく、内部に専門家がいるからこそ、安全な環境で「攻めのAI活用」ができるのです。
―― 他のGPと比較したとき、D CapitalのAI活用はどういった点で先進的だと思いますか。
會田: 一般的な投資ファンドでは、AIも含めた最先端テクノロジーの取り込みにおいて、どうしても初動が遅くなったり、保守的な判断になってしまいがちです。他方、D Capitalはパートナー陣のテクノロジーへの理解度・感度が高く、DXチームや現場メンバーからの鮮度が高い情報共有や提案を受けて、バランスを持ちつつもスピード感を持って社内導入・活用を進めています。社内ではノウハウの共有も活発で、実際の投資業務で使えるAIツールを自作するワークショップなども開催しています。
杉崎: AIの技術自体は日進月歩で、半年前には誰もが驚いたユースケースが今では普通の生成AIで簡単にできるようになっています。ですから、目先の活用状況よりも、それを可能とする「組織」が差別化要因になっていると認識しています。D Capitalは創業時から「DX・AIが差別化のピースになる」という戦略のもとに組織を作ってきました。パートナーレベルにDXのプロフェッショナルがおり、投資検討の場でも他ファンドでは出ないようなテクニカルな議論が飛び交っています。
パートナーのみならずDXチーム全体として、技術のスペシャリストというだけの組織ではありません。上場企業やその子会社でCTOや執行役員を務めた経験を持つメンバーが複数在籍しており、技術を通じて事業を見てきた人材が、さらに入社後はGPの実務経験を積むことでGPとしてのAI活用に向き合っています。ビジネスの視点と技術の視点、投資業務の経験を兼ね備えたチームを一から作ることは、他のファンドにとって一朝一夕にはできないことだと思います。
―― AIの活用によって、DDの初期段階や日々の業務は具体的にどのように変わりましたか。
橋井: 従来のDDでは、最初の1週間を使ってデータをクレンジングし、分析できる状態に整え、その後に示唆を出していくという進め方が一般的でした。しかし、現在はAIによってデータの整理やクレンジングを早い段階で進められるため、VDRが開いた初日に情報を整理し、最初の週から仮説を作り、分析を深めることに時間を使えます。DDでは初速が非常に重要なので、早い段階から仮説を磨くことができるようになったことは本当に大きな変化です。
これまでジュニアメンバーが多くの時間を使っていた、情報を集め加工し整理する作業の多くもAIに置き換わり始めています。その分、単純作業ではなく仮説を考えたり、投資先やオーナーとコミュニケーションを取ったりする本質的な業務に時間を使えるようになりました。AIを活用して「作業」から「考える仕事」へ、さらにPE業務の本質である人との対話へ時間を振り向けられるようになったことは歓迎すべき変化です。
―― AIの進化によって、これからPEプロフェッショナルに求められる価値はどのように変化するとお考えでしょうか。
杉崎: 生成AIによって、80点、85点のアウトプットは誰でも出しやすくなっています。だからこそ「これくらいでいい」と満足するのではなく、最後の95点、100点まで持っていこうとするこだわりが重要です。結果に対するこだわりでも、事業への強い思いでも構いません。その人に仕事をお願いする意味は、AIが出す平均的なアウトプットを超えてどこまで考え、どこまでやりきれるかに出てくると考えています。
4. 投資・DX・経営支援が一つのチームになる――企業変革を実行する三位一体モデル
―― D Capitalの「三位一体(投資・DX・経営支援)」の連携について、詳しく教えていただけますか。
竹内: D Capitalは分業制をとっていません。ソーシングからエグゼキューション、PMI(投資後統合)、エグジットまで、投資チームだけでなくDXチームや経営支援チームも一緒になって一気通貫で取り組みます。
今の時代、AIを使えば「それらしい課題解決の提案」は誰でも作れます。しかし、ご支援先企業が重視しているのは「誰が実際に実行してくれるのか」です。我々は投資検討の段階からDXチームや経営支援チームのメンバーと一緒に提案に伺い、具体的なソリューションを提示します。「この人たちとなら、自分たちがやりたかったことが実現できる」という期待感を持っていただけることこそが、強力なソーシング力につながってくると考えています。
投資チーム、DXチーム、経営支援チームのご提案に関与したメンバーが、エグゼキューションで会社理解を深め、投資実行後に具体的なPMI施策を支援しつつエグジットまで一緒に取り組むため、「顔が見える」安心感も評価いただいています。
―― 具体的なバリューアップの事例を教えていただけますか。
竹内: 私が担当したある製造業の案件では、世界中で消費者需要は旺盛な一方で、製造キャパシティの制約で逸失売上が発生していることが最大の経営課題でした。投資実行前から会社と製造工程改善について議論を深めていたため、投資後は製造工程の見える化によるスループット改善というデータを活用した具体的な打ち手にまずは取り組みました。同時に、製造・品質管理を更に高いレベルに進化させられるエグゼクティブ人材の採用も行いました。結果として、投資後1年半という短期間で生産キャパシティと売上が約2倍に拡大しました。
一例として、製造工程を何段階かに分解して見える化すると、実際には特定の後工程で作業が詰まっているにもかかわらず、現場の方々は取り組みやすい前工程を進めていたため、仕掛品ほど完成品が増えていないことがわかりました。可視化したデータに基づき、ボトルネック工程を明確にしながら管理することで、生産性が改善しました。
エグゼクティブ人材の採用では、私だけではなく経営支援チーム(HRプロフェッショナル)も工場のラインに入らせていただき製造工程を理解した上で、「この課題を解決できるベストな人材は誰か」を会社と議論しながらチームアップを行いました。結果、今では製造キャパシティ改善だけにとどまらず、クレーム対策、代理店営業、新製品開発等、製造データ活用が部署横断的に広がっています。ハンズオン支援の定義は様々ですが、現場と経営の両方の視点から課題の理解に努め、ともに会社を成長させるベストな仲間の輪を広げるようなご支援が非常に重要と考えています。
太田: 海外展開の支援も同様の考え方です。海外展開を進めたいとなっても、そもそもプロジェクトを担える海外人材が社内にいないというケースが多いです。そういった場合、我々自身も最初からどのような人材が最適なのか完全に把握できているわけではないため、まずは自分たちで海外の現場を見に行き、課題と適した人材要件を理解した上で最適な組織設計や人材像を定義します。
ある投資先では現地パートナーとの提携を通じて海外展開を進めていましたが、日本から当該パートナーを通じた遠隔モニタリングでは、現地で何が起きているのか十分に把握できないという課題がありました。そのため、我々は現地へ赴き、一度既存の体制を見直してゼロから組織や管理体制を再構築し現地法人を立ち上げました。現地の状況を完全に見えるようにしたことで、マーケティング投資や採用について、「今現場で何が起こっているか」がタイムリーに分かるようになり、具体的な指示・判断ができるようになったのです。これも現地に自分の足で行って現場を見なければ分かりませんでした。
5. 歴史の長さだけでは、知は継承されない――「この案件を自分で作った」と言える人を育てる、D Capitalの知の共有
―― D Capitalの社内の雰囲気や働き方、コミュニケーションの面ではいかがでしょうか。
竹内: 情報が非常にオープンであることがD Capitalの特徴です。Slackの各プロジェクトチャンネルを通じて、メンバーは広く担当以外の案件のライブ感や、他のメンバーがどう困難を乗り越えているかを見て学ぶことができます。
過去の成功事例の資料だけ眺めていても、全く同じ状況になることはあり得ません。それよりも、意思決定のプロセスや試行錯誤の過程をリアルタイムで学べる環境の方が、若手の成長にとって非常に有意義ではないでしょうか。現在進行形で他のメンバーが考え、実行している過程から学び続けられる環境に大きな価値があるのです。
太田: さらに、D Capitalでは属人化しがちなノウハウを形式知化するために「知の蓄積」というナレッジマネジメントのプロジェクトも創業当初より進めてきました。ファンドの知見はどうしても属人化しやすいものですが、提案資料やアドバイザーのアウトプットなど様々な知見を収集整備し、さらに昨今の各AIモデルとツールの発展によって誰でもアクセスすることが可能になりました。案件状況についてはSlackでリアルタイムでキャッチアップし、完成したアウトプットについてはデータベースから引き出すといった風に、様々なユースケースに応じて組織知にアクセスしやすい仕組みを整えているのが特徴です。
―― 若手の裁量や評価制度についてはいかがですか。
竹内: D Capitalで最も評価されるのは「自分で起案して実行する」ことです。これはパートナーでもアソシエイトでも変わりません。入社3〜4年目のメンバーでも、自ら起案して実行に至った投資案件を持っています。他のファンドで3年働けば「この案件を頑張りました」と言えるようになりますが、D Capitalなら「この案件を自分で作りました」と言えるようになるチャンスがあります。案件の一部分で貢献することと、案件そのものを自分で作り上げることは、ファンドプロフェッショナルとして全く異なる経験であり、そこへ早く到達できることがD Capitalにおける裁量だと思います。
入社時点ではほとんどのメンバーがPE未経験です。最初は投資活動についてパートナーや先輩がどのように動いているかを見ながら学んでいきますが、投資業務に必要な不足部分を補えば自分の強みを生かして徐々に新しいものを作れるようになります。
會田: 評価制度についても、タイトルごとのスキルマップが明確に定義されており、毎月の1on1と年1回のレビューで透明性高く評価されます。「●年やったらVP」といった基本的に年次要件はなく、実力次第で適切なタイトル、ポジションに引き上げられます。プロジェクトのチャンネル等社内のやりとりがオープンなため、「この人が何をやっているのか」を担当チーム外のメンバーからも日常的に見えているため共通認識が自然に形成されやすく、プロフェッショナルとして納得感を持って打ち込める環境だと思います。
―― 働き方の自由度についてはいかがでしょうか。
橋井: 基本的には各自が自分にとって働きやすい場所や方法を選んでおり、出社のルールも細かく決められていません。もちろん何をしてもよいという意味ではなく、それぞれのメンバーがプロフェッショナルとして必要な仕事をきちんとやることが前提です。細かなルールを作らなくてもそれぞれが責任を持って取り組んでいるからこそ、自由な働き方が成り立っています。
杉崎: 私は大企業とベンチャーの両方を経験していますが、D Capitalのカルチャーは成熟しつつあるスタートアップにかなり近いと感じます。和気あいあいとした雰囲気もある一方、プロフェッショナルファーム出身者が多いため、任された仕事は各自が責任を持って完遂します。スタートアップとプロフェッショナルファームの良いところを組み合わせたような環境です。
竹内: 大きな会社ではピラミッド型の組織が整っていて、基本的には上の人が仕事を取ってくる役割と決まっていると思います。しかし、D Capitalでは、自分で案件を作り、リターンを生むチャンスが全員に開かれています。誰かから与えられた仕事だけを続けるのではなく、自分で新しいものを作っていける環境は、私も非常に気に入っている部分です。
6. D Capitalの未来と求める人物像――完成されたファンドに入るか、ファンドを自ら作る側に回るか
―― D Capitalの今後のビジョンと求める人物像についてお伺いできますか。
會田: D Capitalの「D」は、実はDXのDというよりも「Disrupt(変革)」という意味が強く込められています。ファンドとして、変革(=Unlock Japan)を実現するための非常に有効な武器としてDXに注力しています。
中長期的なビジョンとして、「10年後にこうなる」という固まったファンドの将来像はありません。他方、「変革を起こせるファンド」であり続けたいという思いは全員に共有しています。トップダウンで指示を出すのではなく、メンバー一人ひとりが現場で見つけた「面白いこと」を持ち寄り、ブラッシュアップして新しい型を作っていく。そういった部分では、常にスタートアップのような姿勢を持ち合わせている組織です。
DXはあくまでUnlock Japanを実現し投資リターンを生み出すための手段であり、今後DX以外に有効な手段があれば、各メンバーが自ずと探索し取り込んでいくと思います。10年後にはDXは形を変えて、常に新しい変革の手段を探し続けるファンドでありたいと考えています。
―― 採用面接では、どのような点を重視されていますか。
會田: 所謂「スキルセット」に対する評価は、他ファンドとそれほど差はないと思います。D Capitalならではの要素としては、候補者の「マインドセット」に対する評価軸があげられます。具体的には「アスピレーション(強い志や野心)」「当事者意識」「知的好奇心」で、実際に採用面接における評価項目にそのまま反映されています。「こういう面白い仕掛けがしたい」という思いが根底にあり、会社のリソースを使い倒して自分で手を動かせる人、そして自ら探索して発信できる人がD Capitalを最も楽しめるのだと思います。
但し、PEファンドを受ける方の大半は未経験者ですし、「この業界でこの投資を一生やりたい」という明確なテーマ・投資仮説を、入社前から持っている必要はありません。なぜPEに入りたいのかはもちろん考えていただきたいのですが、それ以上に「キャリアを通して何をしたいのか」「どのような仕事を成し遂げていきたいのか」という“志”を見ています。
私自身も入社時点で具体的な投資テーマがあったわけではありませんが、先輩たちが自分でいろいろなことを仕掛け、成果を出されている姿を見て「自分もやってみたい」と思うようになりました。最初から完成された目標がある必要はなく、新しいことをやりたいという気持ちがあれば、環境の中で具現化していくのだと思います。
―― D Capitalに合わない可能性があるのは、どのような方でしょうか。
會田: D Capitalは特徴的なファンドなので、誰にでも合うとは思っていません。それこそ、すでに確立された大きな組織で、明確な仕組みやブランドを活かしてキャリアを積みたい方には、エスタブリッシュなファンドをオススメします。他方、自分で新しいものを作りたい、組織そのものを変えていきたいという方には非常に面白いと思います。
とはいえ、我々自身も常に成長、変化しており、お伝えしたことすべてに共感する必要はなく、一つでも「ちょっと面白いかもしれない」と思えるものがあれば、一度話を聞きに来ていただきたいです。
7. D Capitalで挑戦したい人へ――メンバーからのメッセージ
―― 最後に、読者の方へメッセージを一人ずつお願いいたします。
太田: PE業界に興味があり自ら案件を作りたい人にとって、最高の成長環境とチャレンジできる環境を提供できると自負しています。我々及び今のD CapitalそのものをDisruptしていく気概を持った方にぜひ来ていただきたいです。
竹内: 私はもともとPE業界という軸で転職活動をしたわけではなかったですが、「順番待ちせず早く面白そうなことができる環境」に惹かれ入社しました。キャリアに迷っている方、もっと面白いことがしたいと思っている方は、PE志望でなくてもぜひ一度お話を聞きに来てください。
杉崎: 繰り返しになりますが、生成AIで誰でも80〜85点のアウトプットが出せる時代だからこそ、それに満足せず95点、100点を目指す「自分なりのこだわり」を持てる人と働きたいですし、そういった方にはD Capitalでのキャリアを楽しんでいただけると思います。
橋井: 私はこの会社の自由なカルチャーを非常に気に入っておりますが、その自由はメンバー全員がプロフェッショナルとしてこだわりを持ち、やるべきことをやるという信頼の上に成り立っています。強いオーナーシップを持ち、様々なことに自らチャレンジしていける人をお待ちしています。
會田: プロフェッショナルファームならではのハイレベルな仕事環境、ベンチャーマインドからくる自由度・裁量、オープンなカルチャーがもたらす透明性・納得感、これらの要素が備わったPEファンドは中々ないと思います。我々が話したことの中で一つでも「面白いかも」と思える部分があったなら、ぜひカジュアルにお話ししましょう。
―― 本日は貴重なお話をありがとうございました。
編集後記
PEファンドで成長するとは、案件を経験することではなく、案件を作れるようになること
今回の取材を通じて最も印象に残ったのは、D Capitalが掲げる「DX×PE」が、単なる投資戦略やキャッチコピーではなく、リターンの生み出し方、組織の構造、人材の育て方にまで一貫して組み込まれていることでした。
日々PEファンドへの転職をご支援する中で、候補者の方から「どのファンドで最も成長できますか」「投資実績が豊富なファンドの方が学べるのでしょうか」とご相談いただくことがあります。今回皆さまのお話を伺い、改めて感じたのは、成長環境を決めるのは、必ずしも過去の投資件数やファンドの歴史だけではないということです。
自分が担当していない案件の意思決定や試行錯誤までリアルタイムで見ることができるオープンな情報共有、自らアイデアを起案し、周囲を巻き込みながら案件そのものを作っていく機会、そして投資・DX・経営支援という異なる専門性を持つメンバーが、ソーシングからExitまで一緒に企業変革に向き合う環境。
特に、「他のファンドで3年間働けば『この案件を頑張りました』と言える。D Capitalでは『この案件を自分で作りました』と言える」というお話は、D Capitalで得られる経験を象徴する言葉だと感じました。
また、AIによって情報整理や分析の多くが効率化されていく中で、人に求められる仕事が「作業」から「考えること」「人と向き合うこと」、そして最後の95点、100点まで結果にこだわることへ変わっていくというお話も、PE業界に限らず、これからのプロフェッショナルの働き方を考える上で非常に示唆的でした。D Capitalは、ご本人たちが語られていた通り、決して「誰にでも合うファンド」ではないのだと思います。
確立された仕組みの中で与えられた役割を着実に遂行することよりも、自分自身で新しいテーマを見つけ、周囲を巻き込み、まだ存在しないものを形にしていきたい。そんなアスピレーションを持つ方にとっては、非常に刺激的で、ファンドプロフェッショナルとして大きく成長できる環境ではないでしょうか。
今回の記事を通じて、「PEファンドとはこういう場所」というこれまでのイメージを少しでも広げていただき、D Capitalの皆さまが作ろうとしている新しいファンドの姿に、少しでも「面白い」と感じていただけたら嬉しく思います。
インタビューさせて頂いたコンサルのご紹介
高木 ゆり恵(Yurie Takagi / XG Partners)
PE・VCでの投資経験を持つ、PEファンドを中心としたバイサイド領域専門のヘッドハンター。独立系PEファンドでは、同社初の女性ファンドマネージャーとして、案件発掘、投資実行、投資先のバリューアップ、経営幹部の採用など、投資業務全般を経験。その後、ヘルスケア特化型VCにて、ベンチャー企業への投資に従事。現在は、こうした投資実務経験を生かし、独自の市場情報や採用動向の提供から、LBOモデル・投資ケースの面接対策まで、バイサイド領域におけるキャリア形成と転職を一貫して支援。
同社に関心がある方はその旨明記の上、以下までお問い合わせください。
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